東京支部 伊藤先生のブラジル訪問記

地球の裏側で

「そうだ京都へ行こう」のようにブラジル行きを思いついたのが今年3月初旬。
きっかけは長野式臨床研究会のホームページに載っている「サンパウロ通信」を
読んでいてのことでした。
そこには長野式臨床研究会のブラジル支部では、鍼灸専門学校と協力をして卒後研修を積極的に行なっていることと、実際の患者さんを対象に実技を教えていることが書かれていました。私は鍼灸師の卒後教育の必要性をいつも感じております。

なぜなら鍼灸師となり、右も左もわからぬまま社会人となった私は理想と現実のギャップに苦悩し葛藤し、いつの間にか「鍼灸師」を辞めようと思った時代がありました。しかし諦めかけていたときに「長野式治療法」に出会い、初めて鍼灸治療の面白さ奥深さ人体の精密さに気づくことができました。

そのような経験から「鍼灸」の面白さを伝えることの出来る“場”が必要だと思っています。そのためブラジルで行なわれている卒後教育のシステムを学ぶため今回の「そうだブラジルへ行こう」計画が立ち上がりました。

ブラジル支部の山田先生には見学を快く了承して頂き、それだけでなくブラジル鍼灸学会で長野式治療法の講演までさせていただくこととなりました。
また代表の長野康司先生には背中を押してもらうかのごとく「勉強してきなさい」の一言に勇気を頂きました。

8月下旬
成田空港を出発し、アメリカのダラス空港で乗り継ぎ、サンパウロへ到着
なんと30時間もかかりました。

本来なら26時間もあれば到着できるところ(それでも長いが・・・)
サンパウロが悪天候のため約800km離れた首都ブラジリアに着陸
そのまま天候回復まで飛行機内で待つこと2時間、ブラジリアからサンパウロ
に向け2時間、合計30時間とお尻の痛くなる旅を終え学会の会場であるホテルに昼ごろ無事到着。夕方から講義があるので、ブラジル公証翻訳者でもあり鍼灸師でもあるという貴重な存在の小渡良博先生と事前に打ち合わせを済ませ本番を迎えました。

もともと当日1時間の講義を200人の前ですると伝えられていましたが
実際集まった人数がなんと300人超、受講側の熱意をひしひしと感じながらも
日本とは違う陽気な雰囲気の中無事に1時間の「帯脈治療」の講義を終えました。

二日目は、約50人と小規模で朝から晩まで8時間講義。
長野式の根幹である「扁桃と免疫力の関り」、「自律神経と副腎の関り」や「筋肉の遠隔治療」などを講義し、また実際に受講者の中からモデルをだして実技デモをしました。

ここからは見学してきたことや、伺ったことなどブラジルの現状を紹介していきます

<ブラジルの鍼灸事情>

治療費は日本円にして5000円~6000円と同じぐらい
ただし、物価的には日本の半分なので、患者さんの負担は感覚的に日本の倍です

いまでこそ「癒し」ブームがあり、針やマッサージなどが普及したが
ブラジル支部の山田忠正先生が20年前に鍼灸マッサージを広め始めた当初は「マッサージ=風俗サービス」と勘違いされ「針=得体の知れないもの」と誤解も多く
大変な苦労をされたとのこと。
主に用いている道具は中国鍼、または管鍼法用の毫鍼(韓国製)で番手が
寸6-3番しかないそうです
そのため細い針を用いた微細なハリをする事が難しく、人によっては個人的に日本に行ったときに買って帰ったり、旅行に行った鍼灸師仲間に買ってきてもらうそうです。

<食生活、病気>

予想外でしたが食事が美味しい。野菜も肉もチーズもスウィーツも。
ただし、多くのレストランがブュッフェスタイルのため
よほどの自制心がないと食べ過ぎてしまいます
自分は4日半しか滞在していないのに1kg太って驚きました。
やはり脂肪分や糖分過多での糖尿病、心臓病が多いそうです
病気の治療は西洋医学が基本で服薬が主。
鍼灸院に来院するような患者は、薬の服用量が10種類以上と複雑化してことが多い。
精神疾患も増加傾向と非常に日本と疾病内容が増えている。

<鍼灸学校>

資格制度が確立されていないため国の認める免許はなく、学校によって授業時間もまちまちで、3ヶ月中国の大学に研修に行っただけで鍼灸師になっている人もいる
多くの学校は中医学をベースとしており、鍼管を使わないことが多い
机上の勉強に偏っているため、生徒も卒後の鍼灸師も実技の授業やセミナーを
求めているとのことです。
私が見学した、EOMAはブラジルで最初に作られた政府公認の東洋鍼灸マッサージ専門学校では実際に週の半分は患者さんを生徒が治療し、その後症例検討を行なうという質の高い教育水準を保っていました。

<卒後教育>

長野式治療法を月に1回の講義と週に1回の実技
実技は一人の患者さんに対して2人の鍼灸師が所見を取って治療をし
それを先生がチェックして回るという形式。
その後、治療―症例検討が行なわれるという魅力的な内容でした。
また新米鍼灸師が実際に使っても治療効果が現れる長野式治療法の再現性が
発揮されていることも素晴らしいと思いました。

最後に
EOMAの先生方、長野式の先生方には、ブラジル鍼灸を担う中心であると
誇りを持って、生徒のやる気が燃え上がるよう切磋琢磨してください
心より応援しております。
また日本から多くの人材が流れ、また情報交流が密接になるよう、お互い頑張りましょう。

今回の旅を終え多くの気づきが得られました。
地球の裏側でも日本と同じように東洋医学が非常に求められていること
非常に勉強熱心なこと
ブラジルに行くと世界中どこでも、遠くないと思えること
より実践的な卒後教育の現場が必要なこと

今回のブラジル研修にあたり、山田忠正先生、大山口マユミ先生、新川江利フッチ先生、宮沢貞雄先生、小渡良博先生、サンパウロ鍼灸マッサージ協会会長、
大変お世話になりました。
紙面を借りて御礼申し上げます。Muito obrigado